かけっこで勇姿を見せてくれる運動会。慣れない楽器に四苦八苦する姿が感動的な発表会。お友達とのやりとりに成長を感じるお遊戯会。折々のシーンで、お子さまのいきいきとした様子を残そうと、ビデオ撮影に闘志を燃やすパパ・ママも多いのではないでしょうか。でも、撮影した後で家族に見せてみると「手ぶれに酔った」「画面の動きが速くて疲れた」「同じような画面がずっと続いて、途中で飽きてしまった」と言われてしまったことありませんか。「ホームビデオだから仕方ない」と諦めるのは、まだ早いかもしれません。ほんの少しのコツさえつかめば、画面が安定して観やすくなり、家族みんなで楽しく鑑賞できる映像になるんです。
素敵に仕上がった映像は、後々お子さまに残してあげられる宝物にもなるはず。新学期を迎え、これからいろいろなイベントが始まる春だからこそ、今のうちに動画撮影の基本を身につけておきましょう!
「観やすい動画」を撮るための、3つのポイント。
①“両手”で構える。
観やすい動画を撮るためにもっとも大切なもの。それは撮影時の“姿勢”だとおっしゃるのは、プロカメラマンのヤマワキさん。
「ビデオカメラを構えるとき、もしかして片手で持ってしまっていませんか?意外かもしれませんが、実は家庭用のビデオカメラも両手で構えるのが基本の姿勢。プロカメラマンは、プロ仕様のものはもちろん、家庭用ビデオカメラを使う時にも必ず両手で持ちます。最近のカメラの手ブレ補正機能は年々進化していますが、両手で持つことでより手ブレの範囲は狭まり、よりきれいな映像を撮ることができるんです」
もしファインダーがあれば、そこにしっかり顔をつけて覗くようにしましょう。右手+左手+顔の三点で支えることができるため、安定感がぐっと増します。
②カメラは“腰”を軸に動かす。
次に気を付けたいのは、カメラの“動かし方”だそう。
「カメラは手ではなく“腰”で動かすイメージです。運動会などはお子さまの動きが速く、移動距離も大きいので、特に動かし方に注意してくださいね。手先でカメラを動かすと、どうしても画面の移動スピードが速くなってしまい、観づらさの原因になるんです。腰を中心に、体全体で被写体を追うようにすれば、画面のスピードも目が追うスピードとさほど変わらないため、観やすい映像になりますよ」
③ズームは、寄り(アップ)から引き(ワイド)へ
動画撮影に慣れていなくても、つい使いたくなるのがズーム。「どうしても、全体を映しているところからズームしてアップの映像を撮りたくなると思います。しかし、『引き(ワイド)』から『寄り(アップ)』にズームすると、どうしてもブレが目立ちやすくなります。逆に『寄り(アップ)』から『引き(ワイド)』に逆ズームしたほうが、観る人にもブレが感じられにくく、さらには、かなりドラマチックな見え方になりますよ。走っている姿をアップで追い続けるのはプロでも難しいので、この逆ズームの撮り方がお勧めです」
例えば、運動会でかけっこの様子をレーンの横から撮る場合。まず、スタートラインに立っているお子さまのドキドキした表情をアップで撮影し始めます。そして、「よーいドン!」の合図で走り出した時に、素早く引き(ワイド)にして、周りの様子も画面に入るようにします。そこから、ゆっくり腰を軸に上半身を動かして、走っている姿を追っていきます。こうすると、お子さまの様子と運動会の様子の両方が撮れ、その時の雰囲気がより伝わるドラマチックな動画になります。
④アイテムを活用する。
より視点を安定させるためには、賢い“アイテム活用”もポイントです。お遊戯会や音楽会など、同じシーンを撮影し続けるような場面でとくに活用したいのが、三脚や一脚。
「広いスペースで周囲の邪魔にならない場所であれば三脚を、限られたスペースであれば足回りがコンパクトな一脚を選びましょう。カメラを構え続ける撮影者の負担も減りますし、何より上下のブレがなくなるので、ぐっと観やすい映像になるはずです。また、一脚の場合、カメラを付けた一脚を持ち上げて撮影すれば、さらに高いアングルから撮影できて、普段の目の高さでは見られないおもしろい映像を狙うことも出来ますよ!」
当日までに、撮りたいシーンをイメージ。
“どう”撮るかをチェックした後は、「観る」ときのことを考えながら、“何を”撮るのかを考えておきましょう。撮りたいシーンをイメージして、撮影の計画をしっかり立てておくことで、何を撮ったのかわからないと言われた……なんていう残念な結果にならずにすみます。
例えば、運動会で撮影する場合には、まずプログラムをみて一日の流れを把握しましょう。そして、それぞれの場面でどんなシーンが撮りたいかイメージし、そのシーンを撮るには、どの場所からどのアングルで撮ればよいか考えます。各シーンに適した場所やアングルを決めれば、当日、カメラマンとしてどの時間にどの場所に行くのか、一日のスケジュールが決まってきますね。例えば、かけっこでゴールの瞬間を撮りたいのならゴール近くに、玉入れの全体像を撮りたいのであればトラック全体を映せる少し離れた場所に移動するよう計画しておきます。こうして事前に計画しておくことで、狙った動画を撮影できるようになります。
「編集で文字を入れたりすることも想定して、冒頭のタイトルが入れられるように会場の青空を撮っておいたり、最後のシーンに使えそうな運動会後の校庭や汚れた靴などを撮影してみたりするのもおススメです」
「バリエーション豊かなシーンを撮り溜めておけば、撮った動画を編集する時もより楽しくなりますよ」とヤマワキさんは語ります。また、観る人にとっても場面に変化がある方が、飽きずに最後まで楽しく見られる動画になります。
撮影した後は、データの移しかえもしっかりと。
よくありがちなのが、撮影したことで満足してしまい、ビデオカメラの中に動画データを残しっぱなしにしてしまうパターン。そうすると、ちょっとした誤操作でデータが消えてしまう事故につながりかねません。また、次のイベント時に「前のデータがいっぱいで撮影できない!」と慌てる原因にもなるため、撮影したデータはその日のうちに必ずパソコンなどに保存する習慣をつけましょう。
「データはそのまま保存するのではなく、フォルダごとにわけて整理しましょう。私もいろいろな方法を試しましたが、日付ごとにフォルダを分けるスタイルが一番簡単でわかりやすいと思います。撮影したデータは、カメラ上で操作せずに、まずはまるごとフォルダへコピー。それからパソコン上で不要なシーンを削除していきます。イベントの記憶が新鮮なうちにデータの選定をしてしまえば、編集のためにもう一度最初から見返す、という手間が省けていいですよ。データの取捨選択さえ済んでしまえば、あとの編集作業が楽になりますよ!」とヤマワキさんのアドバイス。
「データ選定をカメラ上で行うと必要なデータをうっかり消してしまったときに取り返しがつきません。必ずパソコンなどにコピーして選定するようにしましょう」
選定作業の後には、間違いなく必要なデータが保存できたことを確認してから、カメラ内のデータを削除。バッテリーを充電しておき、次のイベントに備えておきましょう。
さらにステップアップ!
上達のためには、まずは撮る。そして、たくさんの人に観てもらいましょう。
上達の第一歩は、撮影した動画に対して客観的な意見をもらうこと。まずは、撮影したものを家族やお友達に観てもらいましょう。「こんなシーンがあったらいいかも」「こういう文字が入っているとわかりやすい」などいろいろな意見をもらうことで、次の撮影時に活かせるヒントが得られるはず。
また、他の人が撮った動画の中にもヒントがかくれているはず。例えば、テレビ番組を観るときにも、「どんなシーンを撮影しているのか」「どのような角度から撮っているのか」などのポイントに気をつけて観てみましょう。
画面が安定して観やすく、イベントの楽しい雰囲気が伝わる動画が撮れたら、家族で鑑賞したり、ご両親や親せきを招いて上映会を開いたり、来客時のBGV(バックグラウンドビデオ)として流しておいたりして、みんなで楽しみましょう。一緒に観れば、話が盛り上がり、楽しさが何倍にもなります。
年間行事である運動会や音楽会などでお子さまの様子を撮りためていけば、貴重な成長記録にもなります。そして、10年後20年後に親子で見返せば、成長をたどれるとともに、忘れかけていた思い出がよみがえり、すぐに観るのとはまた違った楽しみがありますよ。そんな時のために、お子さまの成長を撮りためた動画は、大きくなってからも見返せるように、大切に保存しておきましょう。